2014年2月9日(日)〜10日(月)
「ッイ、よっこはまぁ〜、ッア、たそがれ〜♪」と歌う親方と一緒に、1泊2日で行ってまいりました、みなと、よっこはまぁ〜♪
詳しいレポートは、別館
『日曜日のごちそう』横浜レトロバー探検旅行に書いたので、興味のある方は、そちらをどうぞ。
今回、訪れたバーは行った順に以下5軒。
スリーマティーニ(創業1994年)
ジャックナイフ(創業1989年くらい?)
スターダスト(創業1954年)
アポロ(創業1964年)
クライスラー(創業1954年)
横浜は、古いバーがまだまだ他にもたくさんあります。バーという文化がまだ生きているなぁと感じました。
で、バーについて、いろいろ思うところがあったので書いてみようと思います。
今回のレトロバー巡りで「ジャックナイフ」だけはちょっと路線が違う(あのバーは、いわゆる街のバーとは違う存在価値で語るべきでしょう)ので、他の4軒について。
今回訪れたなかで、一番新しいスリーマティーニと一番古いクライスラーは、オーナーの美意識でもって店内がきちんとメンテナンスされています。どちらも、店内の壁も棚も、オーナー独自の審美眼で選ばれたモノたちで、整然と雑然が渾然一体となって、隙間なくぎっしりと埋め尽くされています。余白はありません。
実は、この空間の使い方がポイントだと、私は思っております。日本は古来より「侘び寂び」とともに「余白の美」を大切にしています。日本の和室は「何もない」ことが大事なのです。だから、日本人は、余計な物は見えないようにする「隠す収納」が大好き。
一方、西洋の文化は装飾美、「見せる収納」「埋め尽くす美」といえます。油絵は白いキャンバスに色を重ねて塗り尽くします。レストランやリビングルーム等の空間インテリアにおいても、例えば暖炉の上には、隙間なく写真立てやら美しいオブジェ等が飾られているし、壁には額に入った絵や写真が数学的に(計算されて整然と)複数ぎっしりと並べられています。
なので、正しく西洋文化を受け継いだ(あるいは模倣した)日本の港町の古いレストランやバーは、「埋め尽くす」美学でもって、店内の空間を創りだしているべきだと思うのです。
そういう意味で、クライスラーとスリーマティーニは、歴史も創業者の世代も違えど、空間を見事に埋め尽くして、いい雰囲気であります。
そして、スターダストとアポロ。この2店は、正直いって、どちらもヤレています。全く改装していないという良さはありますが、そこに価値を見いださない人にとっては、ただ古いだけのバーかもしれません。創業時のデザイン美学を生かしつつ、少しずつ手を加えて、メンテナンスしていれば、もっと魅力のあるお店になっていた気がします。しかし、変な改装をするよりは、何もしない方がいいです。どちらにしても、創業以来そのままの内装を維持しているという点で、港町横浜の古き良き時代の文化遺産であることは間違いありません。
しかし、内装やデザインよりも、今回印象に残ったのは、お店に立つ人たちです。4店それぞれ、本当にタイプが違います。でも、どこのお店も気どりがなくて、個性的で人間味があって、いい感じでした。お店がヤレてても、全然許せちゃうのです。それぞれの空間で、それぞれの接客で、本当に寛いで気持ちいい時間を過ごせました。
親方は、よく「バーテン道」という言葉を(たいていは否定的な意味で)使います。形から入る日本人は「道」が大好き。茶道、華道、書道、武道、.........。日本のいわゆるオーセンティックバーにも「バーテン道」がある、というのが、親方の持論。道あるいは形というのは、言葉を変えれば、ある意味でマニュアルです。だから道の元にある「心」を理解せずして、必要以上に「道」にこだわると、人間味がなくなってしまう。形ばかり気にしたつまらないお店になっちゃう。我々、名店といわれるバーに行って、そういう思いをしたことが何度かあります。(京都のバー巡りのときとか、ね。博多でも、そういうことあったなぁ。)
でも、今回の横浜レトロバーはどこも「バーテン道」なんてどこ吹く風で、居心地がよかったです。
いやはや、キャバレロ30周年なんて、まだまだひよっこですね。
親方にも、アポロのマスターみたいに、70過ぎても現役で、ずっと元気に頑張ってカウンターに立ち続けていただきたいものであります。
以上、「横浜レトロバー探検隊、バーについて考えるの巻」でした。